2022/10/08

ゴミの山

https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/0906/09/news024_3.html

普通、「ゴミの山」は悪臭・汚れ・危険などネガティブなイメージの付きまとう厄介者でしかない。ドイツのゴミの山は管理されてはいるが、緑化したからといって農業に使えるわけではなく、数十年の閉鎖管理が必要なお荷物だ。
 それでも全く使い道がないわけではない。発生するメタンガスの有効利用もひとつの手で、これが「ゴミの山をエネルギーの山に変える発想の転換」の第一段階だ。今回は「ゴミ処理技術+エネルギー」をモットーに、この分野のパイオニアとしてドイツ、スイス地域でビジネス展開するリーテック社を取り上げる。
ヘッセン州の州都ヴィスバーデンに程近いホッホハイム市郊外にあるゴミ処理・埋め立て処分場「ライン・マイン埋立地」には半径50キロ圏から家庭系、産業系のゴミが持ち込まれる。麦畑に囲まれた90ヘクタールの広大な敷地には、ゴミ埋め立て処分場のほか、生ゴミの発酵処理工場、バイオガス燃焼施設、灰木材燃焼施設、汚水処理施設、汚染土壌処理施設などが集まり、生ゴミだけでも年間4万5000トンを処理している。ここは単なるゴミの埋立地ではなく、ドイツでも最大級の複合ゴミ処理場と言える。

有機物を含むゴミ埋め立て処分場からは必ずメタンガスが発生するため、何らかの方法でこれを処理しなければならない。そのまま放出したのでは爆発の危険があり悪臭の原因ともなる。ガスは燃焼させるのが一般的だが、無駄に燃やすのではなく発電や温水供給の燃料として利用できれば理想的だし、大気中に放出される温室効果ガス(メタンガス)の削減にも貢献する。
 なお、ゴミ埋め立て処分場から収集されるガスも家畜の糞尿やバイオマスから生産されるガスと同様「バイオガス」であり、再生可能エネルギーの1つとして位置付けられている。ゴミの山に設置された「井戸」からガスを吸い出すため山の内部は大気圧を下回り、ガスが大気中に漏れ出すことはない。
 こういった「ゴミ埋め立て処分場のガス利用技術」を1980年代に実用化したパイオニアがリーテック社である。
さて、ゴミの山のバイオガスを使用する際にはいくつか解決しなければならない問題がある。
 まずメタンガス濃度が30%程度と低く燃料としての質が悪いため、必要に応じて天然ガスを添加することになる。また、ガスに含まれる硫黄酸化物や微細な砂がボイラーやガスエンジンを傷めるので、関連機器メーカーは「ガスの安定燃焼」と「ボイラーやガスエンジンの耐久性向上」の技術開発にしのぎを削っている。
それに加え、ゴミの山から収集されるバイオガスの量は徐々に減少し、20年も経って安定期に入るとガスの発生は止まる。ガスがなくなれば、当然、燃焼施設全体が不要になってしまう。
 これに対してはボイラーやガスエンジンを複数台設置しガスの発生量に応じて徐々に稼働数を減らしながら対応し、さらに生ゴミ発酵処理工場を併設しそのバイオガスを併用することが多い。やはり、このライン・マイン埋立地でも生ゴミ発酵処理を行っている。
ゴミ埋め立て処分場から生み出される再生可能エネルギーはこれだけでない。
 昔は利用方法の見当たらなかったゴミの山の上に太陽電池を敷き、太陽光発電施設として有効利用を図ることがここ数年盛んになっている。2004年に稼働を初めたこのライン・マイン埋立地の太陽光発電はドイツ国内のパイオニア的な施設である(太陽電池面積1万5000平方メートル、最大出力440キロワット)。
成長するコンセプト
 ゴミ処理・埋め立て処分場「ライン・マイン埋立地」には全体を管理するゴミ処理公社RMDのほか、主なものだけでも16社が施設を建設しその管理・運営を行っている。リーテックもその1社であり、生ゴミ発酵処理工場、バイオガス燃焼施設、排水処理施設、ゴミの山の太陽光発電施設の管理運営が同社の管轄だ。
リーテック社の元来の事業はゴミ処理施設の建設であり、施設コンセプトの立案、許認可手続きの処理、設計、建設、(場合によっては)管理運営までこなす。1990年代に入り、ゴミ処理と再生可能エネルギーの統合に新たなビジネスチャンスを見出した同社は「ゴミ処理技術+エネルギー」をモットーとし、ライン・マイン埋立地では前述のように「ゴミの山のバイオガス利用」「生ゴミのバイオガス利用」「太陽光発電」を手がけている。ゴミ処理と再生可能エネルギーの統合コンセプトは現在も発展途上にあり、今後さらなる成長の可能性を秘めている。

0 件のコメント:

コメントを投稿