2019/01/25

時間投資したら神になったら件

https://twitter.com/sirai_002/status/1090279282545315840

「えぇと、ここはどこですか…?俺は死んで、それで…」 「公的には個人用時間管理局、あるいは死後銀行なんて呼ばれ方もしますねぇ。お客様のように本来の寿命の前に亡くなられてしまった方の、時間の運用をする機関でございます」 「はぁ…時間、ですか」 「振込、融資、投資。なんでも承りますよ」

「振込って?」 「ご家族にされる方が多いですね。死んだ後の時間というのは遺産のようなものでして。本人は使えませんし、なら家族にやってくれと」 「はぁ…もしかして、未亡人が長生きだってのはそれ?」 「男性は大抵奥様に振り込まれますねぇ」 「じゃあ、奥さんは」 「お子様に振り込まれます」


「上手くいかないもんだ。…と言っても、俺も天涯孤独の身だし同じか」 「振込以外なら投資はいかがですか。今ならいい銘柄がありますよ」 「投資って?」 「時間といっても、生きる時間をそのまま渡すわけではないんです。可能性、と言いますか。その人が生きていたらありえただろう未来を投資する。

60で死ぬ人に10年分投資したら、その人が70までにした事に応じて配当が貰えるという訳です。良い事も悪い事もね」 「配当って、どこに?」 「次にお生まれになる命でございます。よく強くてニューゲームとか申しますでしょ、あれですよ」 「てことは、なるべく良い事をしそうな人にやる…ってこと?」

「左様で。政治家なんては当たれば大きいですが、外れもまた影響が大きい。某独裁者に投資した方など」 「あぁいい、それ以上は。…うーん。俺は無学だし、特に思い浮かばないなぁ」 「この科学者などお勧めですよ。働き盛りに亡くなる予定でしてね、生きていれば何十万という人を救うでしょう」

「…でも、金に目が眩んで事件を起こすかもしれないだろ?」 「それはお好みでしょうね。心配なら動物にやることもできますよ?樹木も人気です。彼らは何もしませんから」 「モノ、でもいいのか。……ねぇ、あんたさパイオニア号って知ってる?」 「探査機でございますか。確か木星の」 「そうそう」


「あれは木星の外を通って太陽系を出ようとしてる。電源はそんなに持たないからもう俺たちはあれを観測できない。でもさ、まだアイツは生きてんだ」 「生きてる…」 「あれには金属板が載ってる。宇宙人に向けたメッセージのね。ずーっと遠くの奴らへ宛てて…俺、子供の頃すげーそれが好きだったんだ」

「もしかして、お客様」 「…俺が何年生きられたか知らないけどさ、投資するならあいつにやりたい。飛べるはずだった時間より長く飛べるように。そしたらさ、もしかしたら誰かが見つけてくれるかもしれないだろ?」 「宇宙の速度から言ったら誤差みたいな時間ですけど…」 「いいんだ。な、頼むよ」

「私としては構いません。でも、本当にそれでいいんですか?」 「うん。俺さ、一人で寝る時いつもあれのこと考えてた。どっかの遠い星にあの探査機みたいに飛んでるやつがいて、いつかそいつが俺んとこ来てくれるって。だからさ、恩返し。宇宙の端っこで、同じこと考えてる奴がいるかもしれないから」

 アズカリ) イノチ 10:00:00:00 「では、配当が出ましたらまた」 「ここに受け取りにくればいい?ありがと、じゃああんたも仕事頑張って」 「…ご利用ありがとうございました」 フリコミ) パイオニア 9:99:00:00 「珍しい仕事もあるもんですね。……木星の外って、他行扱いかな…?支店長ー!」

… 「俺もさぁ、まさかこんなんなるとは思ってなかったんだけど」 「私も同感でございます。…ここだけの話、面倒なことしやがってって上から随分つつかれたんですからね」 「あの六本足、新人?」 「シッ!ジロジロ見ないでください、私あの子狙ってるんですから!」 「お熱いこって。で、配当は?」

「預けた寿命10年分に対して、恒星間航行法の発見・木星の再発見・木星人との貿易に伴う新技術その他諸々…締めて寿命40億年分になりますね」 「わーお、どうすんのそれ」 「分割で受け取る事もできますよ」 「40億回生きろって?やだよそんなの」 「では、ウチに預けて運用しましょう。それがいい」

「俺、いいように使われてない?」 「カミサマなんて最初はみんなそんなもんですよ。さぁこちらへ」 「お手柔らかに頼むよ」 「さて、高額配当の方には色々と説明がございます。まず第一に、浮かれて時間を無駄遣いしないこと。仕事をやめないこと。気分で天変地異を起こさないこと、人類を見守り…」



ほおう。この話はすごく面白いな。めもめも。

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