2010/12/05

見捨てること

ちょっと10年前のある事を思い出す。

まだ大学生、もちろんまだプロではないの時だった。
その時まで既に8年を描いてて自分書いてたネーム連載は詰んだ。

どう描いても上手くになれない、どう描いても画力が上がらない
作品の幅も広げない。いくつエピソードは暴走して
すごく悩んだ迷走狀態だった。

あげく、その連載を諦めた。
乱暴な最終回を描いて勝手に打ち切り、作品を見捨てになった。

そして1ヶ月に経って気持ちを落ち着いた。
あの作品はやっぱり大切にしたいので、再開しました。
大学の最後1年を使って、伏線回収して綺麗にまとめて完結してあげた。

一番大きな違いは、俺は”何を描けば良い作品になる”ではなく
”自分が表現したい事を最優先に考えてた”。

最後の1年に描いたエピソードはその時のレベルでは最高の出来。

画力はそのままですが、伝えたテーマと演出は上手く繋げ
”その時でさえそこまでやったから、今の俺ならそのくらい負けないで”
ほど良い出来だった。テクニックではなく、心構えのレベル高さ。

その時までの俺は、漫画を描くのは楽しかったが
”何を描きたい”事はずっと漫然に。思考して描く事は出来なかった。

それは当たり前ではない。
好きで描くだけじゃ駄目だ、思考抜きで描くのはいつか詰む

好きな事や伝えたい事は初めから、そこに置いてた訳が無い。
こちらから、ずっと時限内で考えて見つけないといけない。
その時はやっと分かった。

新人賞はその前にとっくに取ったが
その時に初めて、プロに近い資質を手に入れたと思った。

特にこの経験の大切さはな、
”作品を見捨てる事”自体プロなってからやっちゃいけない事。
学生時代でやらないと、社会に入れると許されない。

こういうのは、確かに一度に捨てないと分からない事だが
プロになったから作品を一度だけ捨てても大きなダメージです。
後は後悔しても、その時ように戻って描き直す事は出来ない。

日本の場合でも今まで見た作家を考えれば
打ち切りが連続3回も4回も喰らうと、
殆ど人は作品を描き続ける事ができなくなる。

描く気が残っても、チャンスもうなかなか回ってこない。

自分から作品を捨てるなんてさらに論外だった。

今で考えれば、大学に作品一度に捨てて後悔して
最後はちゃんと完結させる経験は本当にとても大きかった。


その経験がなかったら、
一つ一つエピソードを大切する想いは恐らく無い。

”回単位”で独自な描きたい要素を確定するテクニック
(つまり意味や面白さ薄いの繋ぎ回は出来るだけ作らない)は
多分今でも持てない、盤古も絶対にここまで続けなかった。

下手したら、プロ自体なんてなれなかったかも。

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