2021/09/30

老化と喪失

 「残像に口紅を」を読破。

やべえこれ。楽しい。
「ぷ」が消えたら「切符」言えなくなった主人公は「乘車券」
で乗り越えたのがすごく感心した。

「ご」は消えて「午後」使えなくなったので
「昼間が二分割の後ろの時間」で代用する、すげえ。
世界の解像度が少しずつ下がっていくのがすごくドラマチック。

なんか似てるものがあると思ったら
これは「老化」の過程に近いだな。

最初の数文字程度なら
単なる「たまに言葉が出てこない」程度で支障にならない。

4割程度のひらかなが消える段階で
少しずつ言葉遣いや語調は荒々しくなっていく。
会話の内容はどんどん理解にくくなる。

そして終盤にいよいよ単語連発。意味不明。
何を見てるのは分からない、思考もできなくなって
世界の全てが崩していく。

「できること」は少しずつ減っていく。
「できないこと」は少しずつ増えていく。
それでも生き続けないといけない。代案を探しながら足掻く。

そしてラストの崩壊、死の風景のそのものと思いました。
喪失の過程は切なさすぎる。

いろいろ感想を書きたいけど本当に長くなるので割愛。

このアイデアは本当に素晴らしい、
いくつ漫画にアレンジされて応用されましたが
どれも原作の1%も及ばない。

そりゃ仕方ない、このアイデアでは
小説でさえ300ページかかりましたから、
漫画で完全に表現したいなら倍のページが必要
となるとこれを描ける連載は基本的に存在しない。

あと語彙力的に漫画家は小説家に遠く及ばないから
このアイデアを描き切るのはほぼ不可能。

でも、いつかこのアイデアで1度描いてみたい。

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